大錬金術師の誕生(2)
大錬金術師は、錬金術によって引き起こされた悲劇の反省として生まれた。
ニューワールドで生きてゆくために、未知の技術は必要であるという一方、未知の技術の濫用が様々な悲劇を招くという矛盾。
これに対する方法は、常識的なもの……すなわち、慎重な基礎研究だった。
海法「ターン14一杯は、まず、基礎研究だ」
よけ藩国では、まず1T(T14)の間、大錬金術および錬金術の特殊の商業利用、大規模利用は行わず、国民と共に、研究室での基礎研究、安全性の確保と理解に集中することとした。
七観「研究なら危なくないと限ったわけではないですね」
研究室での研究ならば安全というわけではない。
研究室内での小規模な研究が大規模な被害に広がったマンイーターウイルスの例も反省点となる。
海法「全くだ。慎重にゆこう」
涼華「慎重にすれば大丈夫なんですか?」
かつて失敗した時に、慎重でなかったわけではない。それなりに考えて、方策を練ってはいたわけだ。
では、どうすればいいか?
海法「手紙を書く。みんなで書こう」
詠唱の使い方に教示をいただいたドラグーン・マイト氏。
詠唱、魔術の専門家である夜國晋太郎氏。
聯合を結んだ、同じ森国であるゴロネコ藩国の白魔術師の方々。
そうした方々を招き、詠唱と理力の力を理解し、魔術と自然のバランス、なによりも謙虚さについて教えを請うことが決まった。
セイフティーネット。その言葉が頭をよぎる。
海法「あの子も、そういえば、こちらに来てたんだな」
そういえばもなにも、コゼットがニューワールドに来た、きっかけは、土壌問題である。お礼の手紙を出そう。是空にも声をかけて相談しよう。そう思う。
森沢「お金がいりますね……」
海法「そうだな」
研究費。研究に従事する錬金術師の国民への保証。国の復旧等々。
手伝ってくれる人の真心は、お金では買えないが、真心に報いるためにも、お金はいる。
海法「頑張って稼ごう!」
一同「おー!」
海法「まずは、工房の再建設からだ」
魔法使い/理力使い/理力建築士アイドレスを着た海法達は、
建築図面を広げる。
小さな杖で
頭上に浮いた巨大な石材を誘導し、工房の礎となす。
海法「保護
眼鏡は? 手袋の準備は?」
うにょ「ばっちりです」
錬金術の研究に使われた
難解な古書に、慎重に
手を伸ばす。参考書の一つとて、
暗黒の瘴気に汚染されていた可能性のあるものだ。
いやがうえにも慎重に。自分達だけではなく、皆の力を借りて。海法よけ藩国の挑戦が始まった。