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「オーライ、オーライ、オーライ、そこでストップ!」
「壁紙、壁紙、壁紙はどこだー!」

 寮建築作業に従事する国民達の声が聞こえる。作業者達は一部政庁のスタッフも混じっているが、大多数は国民が雇用され、建築作業に従事している。

 外観や庭園部分はほぼ完成し、あとは内装を整えるだけ、のところまで工事は進んでいる。

 別のエリアでは巨大ドッグの建造を開始、また新たに国内事業として発足予定の「錬金術による工業」も、ヨケルド=ヨケーニョ氏をはじめとした先駆者達が、国民達にレクチャーを始めている。

 新職業「国際救助隊」は、現時点では志望者を募ってトレーニングを開始した。こちらはお披露目まで国外には秘匿、とされている。「動物使い」は、まず動物との対話、心を通わせることが大事だと、国民達に語っている。


“国を再建するには、まず国民を富ませなければだめだ。ではどうするか”

 先日の火災で家財を失った国民達を積極的に雇用し、まず彼らに対して衣食住を提供する。A&Sに発注した以外の施設類はすべて国家事業の一環として建造し、そうやって傾いた国を少しずつ再生していく。

 人材募集の告知を出した当初は、集まりが悪かった国民も、衣食住の保障と、確固とした賃金設定の話が口コミ、というか国民同士の瞑想通信で広まり、徐々に人が集まりだして、団体として機能が働きはじめた。このペースがもっと速まれば税収から国民へ還元、そして国民は税金や消費で国へ還元、といったサイクルが回り始める。

“藩王は国庫を空にしてでも、藩国を再生するつもりだ”

 いつ頃からか国民の間で流れ出したこの噂は、「ひょっとしたら今度こそ、平和が訪れるかもしれない。戦争やテロに脅かされない暮らしができるかもしれない」という願いに変わり、少しずつではあるが国民達を動かし始めてた。警察署、消防署の発注や、他国と連携しての政策発表が、徐々に国民の心を揺さぶっている。

 国としては、まだまだ再興予定には届いていないし、難民化した国民の帰還も思ったほど伸びていない。でも、いつかはきっと、「税金を払ってでも、胸を張って、この国に住みたい」と思ってもらえるような藩国にしたいと、のうきん摂政は、もうすぐ完成する寮を見上げながら、ぼんやりと考えている。


「だいたい、設計通りに進んでるみたいですね」

 少し離れた場所から、夜國涼華が建築の様子を見ている。その隣には、彼女より背の高い男が並んで、眼を細めて工事現場を見つめている。

「なんだか、懐かしいね。ついこの前まで、あれとよく似た建物の中で生活していたのに」
「ところで、あたしが送った設計書の中に、あたしの知らない人間用居住スペースの設計データが混じってたんですけれど、あれって……」
「何のこと?」

 隣の男は意味がわからない、という表情を見せた。

(青にして紺碧)

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Last-modified: 2011-05-21 (土) 06:22:45 (3122d)