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「おい、若造!」

 紺碧が「蒼孝」に店頭商品としてぽてちを置いてくれないか、お願いしようと通りを歩いていたら、背後からイセール・ヨケハンブラが紺碧を呼び止めた。このイセールという男、かつて[[錬金術でゴーレムを造ろう>]]とし、土壇場で藩王自らがイセールの工房に乗り込み、第二の黒陽子事件を引き起こさぬよう、彼の研究を禁止した、と言う過去がある。それはさておき、

「……イセールさん、その若造、というのは私のことでしょうか?」
「そうだ。お前だ。お前に用がある」

そういってイセールは、つかつかと歩み寄ると大きめの封筒を紺碧の顔面に叩きつけた。さすがに至近距離ではよけることもできず、紺碧の顔面に封筒が貼り付いた。

「な、なんなんですか。痛いじゃないですか?」
「ふん、そんな痛み、儂の大事な研究を取り上げたことに比べればどうということはない」
「イセールさん、何度もそのお話はしたでしょう。あなたの研究は確かに素晴らしいが故に、弱点があると」
「儂の、儂の研究の邪魔をしおって!あれが完成していればなぁ!」
「あなたは確実に拘束されますよ。それでいいんですか?」
「ぐむむ……」

イセールの眉間にしわが寄る。他国で起きた悲劇をまた、彼も知っていたからだ。

「ふ、ふん。そんなことはどうでもいい。そのレポートを、ありがたく受け取っておけ」
「レポート?」
「そうだ。儂が研究したものだ。くれてやるのは少々もったいないがな。お前らがごそごそ何かやっているのはとっくに気づいておる。それについての、レポートだ。用件はそれだけだ。じゃあな、若造」

元来た道を、尊大な態度で歩き去っていくイセール。紺碧はとりあえず、封筒の中身を取り出した。

「えーなになに、“よけの心”の技術に関するレポート?なんだそりゃ?」

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『“よけの心”なる技術の根幹は、いわゆる究極のクロスカウンターである』
『敵の攻撃、妨害を紙一重でよけ、救いを求める同胞に、または敵に“最高の一撃”を届けるのが、“よけの心”であり、その技術である』
『海法よけ藩国は過去、何度も傾きかけている。だが、その度に国は復興を遂げる』
『それは“よけの心”が発動し、自らの危険も紙一重でよけるからだ』
『“絶技アーノマーホ”を見るがいい。あれは対絶技絶技、究極のクロスカウンターだ。目を合わせれば危険とされるオーマに対し、生身で近寄り、至近距離で放つなど、正気の沙汰ではない。だが、それを可能にするのが、“よけの心”という名の技術である』
『また、この技術はあらゆる障害をよけることで乗り越え、他国とも手を取り合い、連携し、平和を築こうとする意志の力でもある。我々よけ藩国民は、“ハーフエルフ問題”を自ら乗り越えた。この技術は将来、この国と世界に繁栄をもたらす力になるであろう』

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「……クロスカウンター、ねぇ。どっかで頭でも打ったのかな、あの人。ま、一応陛下にお見せするとしましょうかねぇ。とと、その前に蒼孝行かなきゃ!ぽてち重要超大事!」

その後、蒼孝でぽてちが取り扱いされるようになったのか。それは、あなたの目で確認して欲しい。

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