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 ※高位森国人からの派生ですが、アイドレス組み替えのため、絵/文で人アイドレス以外の要素を満たす必要があります。

組み替え元になったアイドレス(参考資料):[[高位森国人+猫妖精+医師+名医]]

L:動物使い = {
 t:名称 = 動物使い(職業)
 t:要点 = 火の環,鞭、動物
 t:周辺環境=サーカス

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◆コンセプト:動物は友達

◆プロット
◇場面1
1.よけ藩国に医者ありて、世に派遣す
2.近年、多くの戦乱で森国人の森が焼かれ、森に住む人々と動物たちは住処を失い怪我をし傷心した。
3.医者はこれに心を痛め、人に限らず天上天下東西南北其処此処の怪我をした命を助けることを決意する
4.医院には人に限らずあらゆる命ある生き物が並ぶ事と成る

※この場面における要点消化
・高位森国人・医者・名医の要点をここに入れてください
・イラストや文章の雰囲気=戦乱で傷ついた人々や動物たちが病院で治療を受けている様子

◇場面2
1.戦乱は人の心、特に子供の心を傷つけていた。
2.医者は外傷は癒せても、心は直せないことに悩む
3.悩みはあれど、幾日も人と動物と命ある者たちを癒し続けているある日
医療のお礼にと、動物たちが芸を見せてくれる。
4.医者は喜び、そして子供たちにも見せてやってほしいと願い出る。
動物たちは頷き、子供たちの心を癒すために医者と旅に出る
5.以後、医者は各地で診療を行う傍らで
指揮鞭を揮い、動物たちと芸を行うことになる
小さな小さなサーカス団が誕生したのです。
6.こうして出来たこのサーカス団には一つの伝説があります。
医者が揮う指揮鞭はただの一度も動物たちに触れることは無いというのです。
にもかかわらず動物たちが巧みな芸をする。
そして、生き生きと芸をする動物たちの瞳こそが子供たちに光を与えるのでした。

※この場面における要点消化
・高位森国人
・『火の環』くぐりの芸をする『動物』、指揮『鞭』を揮う
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**動物と医師達 [#fae66a12]
かつてそこには、笑顔が会った
かつてそこには、青々とした木が、林が、森があった。
かつてそこには、爽やかな風が吹いていた。
かつてそこには、動物達の声が溢れていた。
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海法よけ藩国は疲弊しきっていた。
度重なる災害により、森は焼かれ、住む家を失い、そして・・・愛する家族を失った。

それも、一度ならず何度も・・・

度重なる不幸に、人々は悲しみにくれていた。皮や絹で作られた服はぼろぼろ、頭環はズレ落ち長い髪は汚れ、特徴的だった長い耳も今は力なく垂れ下がり、満足な食料も手に入らずやせぎすの体はより一層痩せ細り・・・多くの者達はその瞳からは光が消えかかろうとしていた。
しかしそんな中、いち早く立ち直り動き出した人々がいた。
それは医療に携わる人々であった。

彼らは、人の死に慣れていた。
無論、悲しくないわけではない。ただ、その職業柄悲しみとの付き会い方が上手くなっただけである。
逆に人一倍、それを嫌っていたが為にその職に就いたとも言える。
彼らは再び戦いを始めた。皆の笑顔を守るために。少しでも、死者を減らすように、と。

なんとか戦火を免れた病院や、大人数を収容できる王宮「よけ森キング」で医師達による治療は開始され、大勢の怪我人が治療を受けようと長蛇の列を作られた。また怪我で動かせない人々の元にはよけタイガーに乗った医師が駆けつけた。

そうして白衣を翻しよけタイガーと共に森を駆け抜けていた医師たちのうち、とりあわけ優しい一人の女性医師がある事に気付いた。
森の中には怪我をした動物達がいたのである。
ゴーグル越しに必死に生きようとする動物達を見て、彼女は思った。

「何も傷つき助けを求めているのは人間だけではない、動物達もまた助けるべき同じ国に住む家族なんだ。」

と。
彼女はその思いを他の医師達に伝え、動物達も救おうと決心し行動を始めた。

動物達を助けるため行動を開始した医師達は、森の中で動物達の治療を開始した。
人間達と同じ場所で治療する事は出来ないため、森の中にテントを立て手術台を用意し、人を治療する時と同じように手術服に袖を通しマスクを付けメスを揮い、言葉も交わせぬ隣人を救い始めた。
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ここには今、悲しみに溢れている。
ここには今、焼け爛れた森がある。
ここには今、淀んだ空気が漂っている。
ここには今、動物達の悲しげな声に溢れている。
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だがしかし
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ここには今、かすかな希望と優しさも残っていた。


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**小さな小さなサーカス [#p9ed0f17]
度重なる戦災で、焦土と化した海法よけ藩国において、人々だけでなく動物の命をも救おうとした医師達が居ました。しかし、外傷は治せても、心の傷までは、そう簡単に癒せません。医師達は苦悩します。心の支えを失った人と一緒に苦しんであげるだけではなく、外傷とともに心の傷も癒してあげることは出来ないのだろうかと。これは、そのなかの一人、イレーネ・ヨケールの物語。
御来場のみなさま、小さな小さなサーカス、これより開演となります。

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漆黒の闇の中、燃え盛る炎が森の木々をのみこんでいく。まるで生きているかのように、地を這い、木から木へ燃え広がっていく。よけ森に棲む動物達が、その炎と煙にまかれて、右往左往しながら。逃げ出してくる。ネズミ、山猫、よけタイガー、夜目がきかない小鳥達も、パニックをおこして闇雲に飛び回っている。そんな状況の中、必死に、人だけでなく、傷ついた動物達をも救おうとしている、女性が居た、年齢は28才、森国人医師、イレーネ・ヨケールその人であった。
「ちょっと!何よこの風!これじゃどんどん燃えちゃうじゃない…。消防署も無いっていうのに!」
おりからの強風にあおられて、森はあっというまに延焼して行く。
「文句言っても始まらない。動物達も助けなきゃ…。」
火傷を負って動けなくなった、山猫を保護して、次の救助を必要としている命を探し始めたその時、それまで吹き荒れていた風が急に止んだ。
「良し!これなら大丈夫、行けるわね。」
炎の通り道になっていた場所が、通れるようになったのだ。イレーネは移動を開始しようとしたが、急に動作を止めた。嫌な予感がしたのだ。いや、正確には腕をつかまれて引き戻された。その刹那、炎の渦がイレーネが元いた場所に襲いかかった。
「気を付けろ!死ぬ気か!?」
イレーネが振り返ると、そこには年の頃は30才程の、森国人ではあるが、少し体格の良い男が、腕をつかんで立って居た。
「…ありがとう。助かったわ…。私は、イレーネ・ヨケール医者よ。貴方は?」
「今死にかけたってのに、自己紹介できるなんて、肝の強い人だな。俺は、フォーネ・ガストール。」
「ありがとう。フォーネ…。」
やれやれという感じで頭を掻くフォーネ。
「とにかくここを離れよう。ここは危ないから。」
フォーネに促されて、イレーネは次の救助活動に向かうことにした。

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一晩中燃える森の中で救助活動をして、夜も開けた頃。
「クソ!ほとんど燃えちまったな…。まだくすぶっているところもある。」
と憤りを隠せないフォーネ。
「でも助けられた命もあるわ。」
仮設の救護テントに、運ばれた人々と動物達を治療しながら、イレーネが不思議そうにフォーネにたずねる。
「フォーネ、あなたよけ森で何やっていたの?おかげで助かったけど…。」
「あっ、そうかまだ話してなかったな。俺はよけ森の外れで牧場をやってるんだ。それであの火災だろ?よけ森の外れでも、結構住んでる人は居るから。様子を見に来たんだ。動物達も気になったしな。」
頬についた煤を拭いながら、イレーネにも頬が煤けているのを、示唆する。
「そうだったの…。」
「ああ。小さい牧場だけど、今回の火災で燃えなかったのは救いだな。これで、まだ戦災で苦しむ同胞に、食料をわけられる。」
「お人好しね。じゃなかったら、私も助けてないか…。」
破顔するフォーネ。
「お人好しか…。それくらいでちょうど良いと思うよ俺は。おかげで貧乏だけどな。まあなんかあったら、牧場に来てくれ。金は貸せないけれど。」
「あら…。皮肉にも医者は大繁盛よ…。」
「そうだな。笑いごとじゃない。」
とそれまでの笑顔を曇らせた。

/*/

イレーネは、フォーネとわかれたあと、実家の病院に戻って来ていた。
「ちょっと!お父様!動物は駄目ってどういうことよ!」
お父様と呼ばれた男は、58才、名をエダス・ヨケールと言う。ヨケール病院の医院長であり、よけ藩でも名医と名高い人物である。
「イレーネ!医者が獣医の真似事か?病院に動物を入れるのか?」
エダスが、険しい顔でイレーネをたしなめる。
「同じ命じゃない!病院に入れなくても、簡易テントで良いのよ!治療させて!」
「駄目だ、ヨケール家は由緒正しい、医者の家系だ。動物は獣医にまかせなさい。」
いつものように、家系の話しを持ち出すエダスに、イレーネは猛烈に反発する。
「また家系の話し?家柄がどうしたっていうの?そんなものどうだっていいわ!今は手が足りないのよ!もういいわ!」
そうまくしたてると、イレーネはその場を立ちさった。
「イレーネ!」
エダスの呼び声は、イレーネに届いているはずであったが、イレーネが立ち止まることはなかった。エダスは、ため息をつきながら、愛娘の監視を護衛に告げると、一人考え始めた。
「イレーネ…。動物を助けたいのはわかる。だが、動物を診る病院に診察を受けるのを、良く思わない人もいるのを、わかってくれ…。」
数時間後、イレーネは、フォーネの牧場まで来ていた。
「実際、動物を病院に入れるのは、無理だと思う。熱くなってしまって…。だけど、それで終わるわけにはいかないのよ…。」
今は父からはなれ、冷静になったイレーネは、そうフォーネに切り出した。
「なるほど。それで、家の牧場を動物病院にしたいといったところかな?」
と、イレーネの話しを先回りして答え、笑顔を見せるフォーネ。
「まあ。動物達もよけ藩の同胞だ。歓迎するよ。ちょうど、空いている納屋もあることだしな。」
「ありがとう。これから移送の手配をするわ。これからよろしく。」
「ははは。納屋の掃除しなきゃならないな。」
フォーネは、掃除道具を集め出した。
「あら。掃除くらいできるから、おかまいなく、私がやるわ。納屋って何処にあるの?」
そう言って、掃除道具を奪うイレーネ、名家のお嬢様といっても、家事は得意で、自分の面倒くらいはみれるのであった。
「そこの離れさ。ただのお嬢様ってわけじゃないな、やっぱり。」
「当たり前よ!実家は実家、私は私なの。」
こうしてフォーネの牧場に、臨時の動物病院ができることになった。

/*/


動物達を治療するかたわら、実家の病院を手伝うイレーネ。そんなある日。病院で、カイト・リース15才とアルナ・リース12才の兄妹と出会うことになる。
「アルナ、散歩にでも行きましょう。良いお天気よ?」
「…行かない。」
アルナは何の表情も浮かべずに、そう言うと、ふさぎこんでしまった。
「アルナ、散歩ぐらい行こうぜ?」
カイトが心配そうに、アルナに声をかける。
「そうよね?カイト。」
「ああ。」
カイトも、アルナの手前元気に振る舞っていたが、心に傷を負っているのは同じだった。アルナとカイトは、さきの戦災で家を焼かれ、両親はその時に、二人を守って死んでしまっていた。
「アルナ、猫が居るかもしれないぜ?」
「猫…?」
ふさぎこんでいたアルナが反応する。
「あら、猫好きなの?」
「ああ。気まぐれで、凛々しいところが好きなんだよな?アルナ。」
「…。」
「じゃあ今度会いに行きましょう。」
そう、アルナに約束して病院を出るイレーネをカイトが見送りに出てきた。
「ありがとう。先生。」
「いいえ。今夜は冷えるから、もう暖炉に火を入れた方が良いわね。」
気温が下がりはじめ、寒くなってきたのを感じて注意を促す。
「あっ。駄目か…。ごめんなさい…。アルナ、火を見ると、戦災を思い出して、怖がるのよね…。」
「ああ…。炎が俺達から全て奪っていった…。ささやかだけど幸せな生活、小さな家、優しい両親、アルナの心の平穏と表情までも…。」
カイトの目の奥で、憎悪の炎が燃えているかのように、イレーネには感じられた。
「カイト…。」
言葉を失うイレーネ。15才の子供にさせるには、あまりに不憫な表情だった。
「戦災にあう前は、アルナ明るかったんだぜ?歌が好きで、俺はオカリナで演奏してやってた…。」
「そうなの…。」
「…ああ。…俺は復讐してやる…。こんなことになった原因に…。今、武芸と詠唱の訓練してるんだ。兵士になるために。」
一陣の冷たい風が二人の間を吹き抜けていった。

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「そうか…。そんなことを言っていたか…。」
難しい顔をしたフォーネが、夕食のシチューを差し出す。
「ええ…。私は、いっしょに苦しんであげることはできるけど、失った心の支えの代わりになってあげることはできない…。かといって、このまま見てるわけにはいかないわ。どうしたら良いのかしら…。」
「先ずは、シチューを食ってからだ、腹が減ったら、出てくる考えも出て来ないぞ?何より冷めちまう。」
優しい笑顔で、フォーネが手に持っていたシチューをイレーネに押し付ける。
「…そうね。ありがとう。いただくわ。」
「歌えない小鳥に、人に憎しみを持つ山猫か…。イレーネは癒したじゃないか。それと同じだと、思うけどな。」
「小鳥に山猫って、アルナとカイトのこと?」
シチューを食べるイレーネを見ながらフォーネは話しを続ける。
「ああ。動物達は素直だ。イレーネの優しさが伝わったから、今心を許して治療を受けてるんだろ?」
「それは…。そうかもしれないけど、動物達は自力で治ったのよ…。私は外傷を治しただけ…。」
「いっしょに苦しんでくれるだけでも、心強いものだと思う。」
「現実はそうよ、でも私は心を癒してあげたいの…。ありがとう。おいしかったわ。動物達の治療に行ってくるわね。」
シチューを食べ終えたイレーネは、気持ちの整理がつかないまま仕事に向かった。

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いつもと様子の違うイレーネの気配が伝わるのか、動物達も落ち着かないようであった。食べる食べられるの、種族をこえて、みんなイレーネのことが心配なようで、周りに集まって、まるで励ましているかのように見える。しかし、イレーネ本人は、考え事と治療に没頭していてそれに気づいていない。
「みんな…、お話しを聞いてくれる…?」
イレーネは、誰に聞かせるわけでもなく、自分に言い聞かせるように、話し始めた。
「歌えない小鳥に、人に憎しみを持つ山猫の話しを…。」
小鳥達が身を寄せ、山猫が目を細める、動物達がじっと聞き入り始める。
「あるところに、非常に仲の良い動物達が居ました。ささやかだけど幸せな生活、小さな森、優しい二匹の猫、元気な小鳥は明るく歌を歌い、腕白な山猫はそれに合わせて、喉を鳴らします。…しかし、そんな楽しい日々も、終わる時がやって来ました。人間がやって来て、戦争を始めたのです。森は焼かれ、二匹の猫は、小鳥と山猫を守って死んでしまいます…。」
動物達は、水を打ったように静かに話しを聞いている。イレーネは、淡々と話しを続ける。
「元気で明るく歌を歌っていた、小鳥は歌を歌えなくなり、炎に襲われる悪夢を見るようになりました…。腕白な山猫は人に憎しみを持つようになりました…。私は…、私は小鳥と山猫に何をしてあげられるのかしら…。」
イレーネが、そこまで、話した時だった。
「にゃん!にゃん!ちゅー!」
一匹のネコリスが、イレーネの前に進みでた、怒っているようでもあり、励ましているようでもあった。おそらくそのどちらも正しいのであろう。
「ネコリス…?私の話を聞きに来たの…?」
少し大きなネコリスが慌てて、イレーネの前に進みでたネコリスを連れて離れる。イレーネが周りを見ると、何匹かのネコリスが、集まって来ていた。
「にゃんにゃんちゅー!」
先程のネコリスが、何かを指し示している。
「何…?ちょっと!あなたそんな芸いつ覚えたの?」
見ると、一匹のネズミがボールに乗って、器用に玉乗りをしている。まるで、イレーネを励ますように。それを見たイレーネの脳裏に閃くものがあった。
「ねえ、お願いがあるんだけど、その芸子供達にも見せてあげてくれない?」
「チッ、チュー!」
「ゴロゴロゴロ…。」
「ピピピッ!」
ネズミどころか、他の動物達も同意したかのようだった。イレーネがネコリスを見ると、ネコリスは頷いてみせた。
「ありがとう。みんな協力してくれるのね?」

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「アルナ、カイト、夕飯よー。お父さん、呼んで来てくれる?」
「はーい。行きましょ。お兄ちゃん。」
「俺が呼びに、行くから、アルナは待ってろよ。」
「えー!私も行くー。」
「いいから、ここに居ろ。良い子にしてるんだぜ?」
「また子供扱いしてー。」
夢の始まりはいつも同じ、幸せな日常。しかし、それももうすぐ終わる事がわかっている。カイトが、父を呼びに行って、戻って来ると、戦災で家が燃えているのだ。母に守られた、アルナはまだ、燃え盛る家の中にいる。
「カイト!お前はここに居ろ。俺が助けに行く!」
「親父!」
カイトが、声をかける前に、父は家の中に飛込んでいた。カイトがそれに続く。アルナと母を助けた父が、脱出しようとしたその時、焼け落ちた梁が四人を襲う、そして…。
「アルナ!大丈夫か!アルナ!」
そこで、目が覚めた。
「お…兄ちゃん?」
夢を見てうなされていたアルナを、カイトが覗き込んでいる。アルナは、前にもこんなことがあった気がしたが、詳しく思い出せなかった。苦しかったが、泣きたくても泣けなかった。
「……。」
「また、夢を見たのか?」
そう言う、カイトはどうやら先程まで訓練をしていたようだった。
「ここに居るから…、寝れるならもう一度寝たほうがいい。」
カイトはアルナを再び寝かしつける事にした。

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「小さな小さなサーカスか…、俺は、ピエロってところかな?これでも、手先は器用なんだ。ジャグリングや手品くらいできるぞ?」
話を聞いたフォーネは、ピエロの衣装などを用意していた。
「…ちょっと!鞭って…、フォーネ…。」
「待て待て…。叩くんじゃない、風切り音で合図を送って指揮するんだ。らしいだろ?」
笑うフォーネ。
「なるほど…。子供達喜んでくれるかしら?」
「大丈夫。喜んでくれるさ。さて、練習練習!動物達の得意なことに合わせて芸を考えなきゃな。」
イレーネ達は、サーカスを開くために、準備を始めることにした。澄んだ冷たい空気に天気は晴れて、空には星が瞬いていた。

/*/

それから、数日の後、イレーネ達がサーカスを開く準備を終えた、その日の夜。アルナとカイトは、イレーネに病院の庭に、案内された。満天の星空だった。
「一体何が始まるんだ?先生…。」
「約束したでしょ?猫に会いに行こうって…。今日は来てもらったの、山猫とみんなに…。」
「山猫とみんな?」
カイトが首をかしげる。
「小さな小さなサーカスへようこそ!」
イレーネがそう言うと同時に、街灯に灯りがともる。そこには、ピエロになったフォーネと、動物達が居た。
「うお!?サーカス…?」
「ええ、そしてあなた達が今日の観客よ。」
「おい!アルナ!見ろよ!山猫だぜ?すげえ。ネコリスまでいる。」
「山猫…。」
表情こそ変わらないが、アルナは動物達に興味をひかれているようだった。
「小さな小さなサーカスこれより開演となります。」
イレーネが指揮鞭を取り、演目が始められた。フォーネが華麗に、ジャグリングを決めたと思うと、それを、ネコリスが邪魔する。追いかけっこの、パントマイムが始まった。
「見てるかアルナ?ははは!ピエロが壁にぶつかって、ネコリスに逃げられたぜ?」
「…。」
無表情ではあるが、アルナの視線は、サーカスへ向けられていた。彼女なりに楽しんでいるようだった。
「…パン!!」
鞭の先が空を切り、乾いた音を立てる、イレーネの指揮鞭に合わせて、動物達が巧みに芸を披露する。しかし、鞭が動物達に触れることはない。ネズミの玉乗り、よけタイガーの煉瓦割りなど、演目が次々に演じられていく、そして…。
「本日のメインイベント!山猫の火の環くぐり。その前に、私が華麗にくぐって、見せましょう!」
ピエロに扮したフォーネが、おどけてそう言うとアルナに緊張が走る。
「嫌…。」
「大丈夫…。怖くない…。」
真剣な表情のイレーネを見て、カイトがアルナを抱きしめる。
街灯が消えまた辺りは、星の光だけになる。そして、火の環に火がつけられた。赤い炎が揺らめく。フォーネはピエロらしく失敗。
「あちっ!あちっ!尻が燃えた!」
と、水の入ったバケツに尻を突っ込んで笑っている。
「いよいよ本番です。山猫の火の環くぐり。成功したら、拍手喝采!」
イレーネの鞭が鳴る。山猫が颯爽と駆け抜け火の環をくぐる。そして、アルナの前に進み出ると、心配そうに喉を鳴らした。その目には、火の環の炎が写り込んでいた。
「山猫…。お兄ちゃんみたい…。」
アルナがぎこちなくも笑顔をみせる。そして、一筋の涙が流れた…。
「アルナ!?」
「思い出した…。」
驚くカイトに、アルナは話しを続ける。
「お父さんと、お母さんが死んだ、あの時も、お兄ちゃん私を助け出してくれた…。そして、いつも一緒に居て心配してくれてた。だけど…。」
アルナは、言葉を区切ると、泣き出した。
「だけど…。お兄ちゃん、兵士になるって、変わっちゃった…。もし、お兄ちゃんが死んだら、私は一人になっちゃう!私は一人になりたくない!」
「アルナ…。」
二人の周りに、動物達が集まって来て居た。まるで炎の記憶から守るかのように。
「サーカスの真似事か?」
アルナとカイトを見守って居た、イレーネに、静かに声をかける人物が居た。珍しく笑顔をみせるエダスである。
「真似事ではありません、サーカスです!小さな小さな…。」
イレーネは、そう言い放った。

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“肌をさす冷たい空気
 雲のない澄んだ空
 大地は眠り
 春を待つ

 寒さに凍え
 身を寄せ合う
 一人じゃないと気づかされる
 そんな冬が私は好きだ

 森を覆う白銀の絨毯
 また芽吹く緑
 忘れないで一人凍える夜も

 草木萌える春を待とう
 貴方とともに
 暖かな炎の記憶”

アルナとカイトが、フォーネの牧場に、通うようになり、アルナは好きだった歌を歌えるまで回復し、カイトはそれに、オカリナで伴奏をつけていた。二人の母が残した歌だった。
「元気に、いや…。強くなったな、二人とも。」
「ええ。みんなのお陰ね。…私、旅に出ようと思うの…。まだまだ、心に傷を負った人達が居るはずだから…。」
「動物達も連れて行くのか?」
「いいえ。みんなには、みんなの生活があるもの。」
イレーネが、そう言うと、山猫がイレーネの肩に乗り喉を鳴らした。他の動物達も、イレーネを見つめている。
「にゃんにゃんちゅー!」
ネコリスが手を振った。別れを告げているようだった。
「…みんな、ついて来てくれるの?…ありがとう。」
イレーネは、山猫を撫でながらそう言うと笑った。
「蓄えもなくなったし、牧場は閉鎖…。飯が食えれば良いから、俺も雇ってくれないか?」
「…フォーネ。ええもちろん…。」
「行っちゃうの?」
「抜け駆けはなしだぜ?歌と演奏が出来る俺達も連れて行ってくれ!」
アルナとカイトが、イレーネに詰め寄る。
「カイト、死んだ者を忘れろとは言わないわ…。だけど生きるもののために戦ってくれるかしら…。殺すために戦うのではなく、生かすため、守るために戦って。それが出来るなら、一緒に行きましょう。」
イレーネは、アルナを見ながらそう言った。
「わかってるって!約束だぜ?」
「ええ。」
イレーネ達が、ネコリスに見送られて、旅だったそのころ。
「これでまた、孫の顔を見れるようになる時期が延びた…。」
護衛からの、報告を聞いた、エダスは、そう言って、苦笑すると。
「イレーネ達を、陰から、バックアップしろ!ヨケール家の威信にかけて!」
そう護衛に命じた。それからしばらくして、心も癒す医者の噂が聞かれるようになったという。寒さも緩み始め、春は、もうすぐだった。

/*/

かくして、アルナとカイトの心を救い、旅に出たイレーネでありますが、これが後に広まる、動物使いの興りであると言われています。御来場のみなさま、長い間おつきあい、ありがとうございました。これにて、小さな小さなサーカス閉演とあいなります。イレーネ達のその後につきましては、また別のお話。機会があったらまた、お話いたしましょう。
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- 設定とかのすり合わせを10月13日 20:00~ やりたいなーとおもいますー。作業者の皆様、いっしょにはなしましょー よろしくお願いします -- [[メビウス]] &new{2008-10-11 (土) 13:27:32};
- ※尚、このコメント欄に、各プロットに登場する登場人物や施設の設定などなど、『こんな設定どう?』みたいなのを持ち寄ってから話し合いたいな、と思います。バンバン記入してねー -- [[メビウス]] &new{2008-10-11 (土) 13:30:02};
- 医者は心まで治せないについて「人間の心を癒すのは、人間ではなくて、自然である。」と言う言葉を聞いたことがあります。医者に出来るのは、患者さんが自力で治るまで、一緒に居て、ともに苦しんで居ることで。支えに医者がなるなどということは、出来ないそうです。動物は自然の側ですから、人間より心を開きやすいみたいです。科学による自分と関係ある存在の説明不能。これは、神話による自分と関係無い存在の説明不能と対になっている。科学を「現実」とするなら、神話は「意味」になるかもしれない。神話は自分とそれを取り巻く人や物が意味を持つので、意味ネットワークによって、自分が支えられている状態で、孤独にならない。また、聖域を持っている。科学は、迷信を追い出すが、同時に聖域も壊す。と聞いたことがあります。聖域がなくなると、子供とかに犯罪の手が延びたりするそうです。また、子供とかも悲惨な現実を見ているので、傷付いていると思いますが、アニマルセラピーもありますし、効果はあると思います。続きは、また書きます。 -- [[不離参]] &new{2008-10-11 (土) 14:00:46};
- 指揮「鞭」について調教師は鞭を動物には、当てないと聞きました。動物は暴力だけでは、言うことは聞かないそうです。(逆に襲われたりするそうです。)これが、動物の神様でも、似たようなものだと思います。紺碧さんが言ってたように、鞭の風切り音で、動物に指示出すみたいです。問題は鞭を普通の鞭にするか、あくまで指揮用の鞭(指揮棒みたいなもの?)にするかだと思います。ここら辺で可能行為変わりそうです。まだ考えて来ます。 -- [[不離参]] &new{2008-10-11 (土) 20:58:12};
- 人物設定書いていきます。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 21:27:40};
- イレーネ・ヨケール、女、28才。由緒ある医者の家系で、病院は戦災もあり皮肉にも繁盛している。家系にこだわる父、エダス・ヨケールと何かと対立している。戦災で傷ついていく、人々や動物達が見捨てられず。実家から外にでて治療にあたる。現実は見ているが、そこで終る気はない、芯の強い女性。名家の出ではあるが、家庭的であり、自分の世話は自分ですることができる。優しさがわかりにくく、繊細で五感に優れる。実家の監視が厳しい。イレーネは、動物までも助けることを決意、病院に収容しようとする。しかし、エダスは、「医者が獣医の真似事か?病院に動物を入れるのか?」とたしなめる。イレーネは救助活動中に出会った。動物の扱いにたける、フォーネ・ガストールを頼る。そんななか、戦災孤児のアルナ・リースとカイト・リースの兄妹と出会い。子供達の心が傷付いて居るのに、癒せない自分に苦悩しながらも、自分の信条を守ろうと、子供達と向き会う。そんなある日、医療のお礼にと、動物達が芸を見せてくれる。イレーネは子供達にも見せてやって欲しいと頼み、病院で「小さな小さなサーカス」を開く。イレーネの指揮と、フォーネのピエロに、動物達の楽しい芸を見て、アルナがぎこちないながらも笑顔を見せる。それに、カイトが大変喜ぶ。エダスは「サーカスの真似事か?」と普段は見せない笑顔を見せるが、イレーネ「真似事ではありません…。サーカスです!小さな小さな…。」と言い放つ。アルナが歌を歌えるようになり、カイトがそれに伴奏をつけて楽しそうにしているのを見られるくらい、回復したのを見て。イレーネは「小さな小さなサーカス」を伴い旅に出る。その後、心も癒す医者の噂が、聞かれるようになる。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 22:39:41};
- フォーネ・ガストール、男、30才。小さな牧場をよけ森の近くで細々とやって居たが、戦災で苦しむ人に、蓄えを分けているので貧乏なお人好し。よけ森に詳しく、そこに住む動物の生態なども詳しい。また、牧場をやっているので、家畜の体調なども詳しい。家畜のお産で子供をとりあげたりしている人。イレーネとは、救助活動中に出会う。手先が器用。イレーネに頼られ、牧場を動物病院として貸し出す。「蓄えもなくなったし。牧場は閉鎖。飯が食えれば良いから、雇ってくれないか?」と、「小さな小さなサーカス」のピエロとして、イレーネといっしょに旅に出る。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 23:02:56};
- エダス・ヨケール、男、58才。イレーネの父、頭が固いのが難点だが、しっかりした人物。とてもイレーネを大事にしているが、医者の家系にこだわっているので、いつも対立している。旅に出たイレーネに護衛をつけ、陰から助けるよう指示する。その後、「小さな小さなサーカス」の活躍を風の噂に聞く。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 23:15:31};
- アルナ・リース、女、13才。戦災で両親を失った、女の子。あまり裕福ではなかったが、家族4人で、仲良く幸せに暮らしていた。戦災にあって孤児になる前は、明るく、歌を歌ったりするのが好きだった。しかし、両親を失ってから、ふさぎこんでしまい、表情を失ってしまった。戦災を思い出すため、火をみるのを非常に怖がる。動物好きで、猫などに興味を示す。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 23:33:11};
- カイト・リース、男、15才。アルナ・リースの兄。戦災にあって孤児になる前は、元気な腕白坊主で、アルナの歌に合わせて、楽器を演奏したりしていた。しかし、両親を失ってから、復讐を決意し、武芸の稽古をはじめ、兵士になろうとする。アルナを非常に大切にしている。 -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 23:45:54};
- その他に、ネズミやカラス、ネコリスなどの、動物に出て貰えると良いと思います。イレーネが苦悩する内容は、まだまだ考えてますけども、アルナが火を怖がるので、火の輪で芸をすることで、楽しい記憶を作る方向に、考えてます。(お話づくり初めてなので、変なとこあったら突っ込みお願いします。) -- [[不離参]] &new{2008-10-12 (日) 23:59:04};
- イレーネ。【顔】真面目、意志が強そう、地味系美人【髪】真ん中わけ、後ろでひとまとめにくくってる -- [[蒼のあおひと]] &new{2008-10-14 (火) 16:52:20};
- フォーネ。【顔】人がよさそう、ひとえ、笑顔【髪】前髪短い、後ろでひとまとめ(こっちも短め。肩くらい)、髪の色は薄い緑 -- [[蒼のあおひと]] &new{2008-10-14 (火) 16:55:26};
- アルナ。【顔】無表情、伏目がち、暗い、そばかす【髪】前髪長め、後ろでふたつくくり、茶髪 -- [[蒼のあおひと]] &new{2008-10-14 (火) 16:57:59};
- カイト。【顔】腕白系、険しい、キツい目【髪】前髪短い(フォーネよりは長め)襟足を伸してる、茶髪 -- [[蒼のあおひと]] &new{2008-10-14 (火) 17:06:39};
- 文章を投稿された方は、どこかに署名をお願いします。今あがってるのは、うにょさん分、でしょうか? -- [[青にして紺碧]] &new{2008-10-20 (月) 09:30:55};
- http://www.cano-lab.org/yokebbs/mobile_detail.php?TXT=081014192126664069.txt&PAGE_NO=1ここに、上げてあります。後は、メビウスさんに文章校正とチェックお願いするだけです。 -- [[不離参]] &new{2008-10-20 (月) 11:08:29};
- http://www.cano-lab.org/yokebbs/detail.php?TXT=081027141410336702.txt 1つにまとめて、誤字や文章を修正しました。 -- [[不離参]] &new{2008-10-27 (月) 14:22:46};
- 動物使いSSアップしました。白いアンカー(高位森国人+医師+名医+動物使いへのリンク)が付いてしまいます。(取り方わかりません。) -- [[不離参]] &new{2008-10-27 (月) 14:43:24};
- アンカーのことは、あまりお気になさらず。wikiの仕様と思っていただければー -- [[青にして紺碧]] &new{2008-10-27 (月) 22:33:08};

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