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- 避け森キング(よけキング) へ行く。
- 1 (2008-10-12 (日) 17:37:52)
※これは、施設として区分するために高位森国人からピックアップした物である。
(青にして紺碧)
【避け森キング】(周辺環境:森の王宮/青にして紺碧)
“避け森キング”。
よけ藩国の住民たちは、畏敬を込めて、その木をこう呼んでいる。
てっぺんに王宮らしきものが乗っかって、しかもそこらの木より全然高い。
だったら避け森の王、キングでいいんじゃね?
そこからついた名前である。
始まりはこうだった。
よけ藩国国王・海法紀光が功により侯爵に叙されてから数日後。
そいつは、突然、よけ藩国の城のそばに、生えた。
いや、生えたなんていう生易しいもんじゃない。
一夜明けたら、城のそばの、ほとんど空き地がない場所にどっかりと現れていたのだ。
しかも、樹上には王宮らしきものが備わっている。
(高位森国人周辺環境:森の中の王宮、こと避け森キング/絵:黒崎克哉)
(高位森国人周辺環境:森の中の王宮、こと避け森キング/絵:黒崎克哉)
“こんなどでかいもんが、いったいどこから?だれが?どうやって?”
国民たちは、最初こそものめずらしがっていたものの、そもそも難問を避けるお国柄。すぐに議論するのをやめてしまった。
ところがどっこい。
議論するのをやめるわけにいかないのが政庁のお歴々。そりゃそうだ、城のすぐそばにこんなでかいものが、しかも建物つきで生えているのだ。放置しておくわけにも行くまいと、調査隊が送られることになった。
調査隊に選ばれたのは、帽子猫、森沢、黒崎の名医3名(当時)。
「えー!どうして私たちが行かなくちゃいけないんですか?調査隊なんていう名誉よりも、休日をください、休日を!」
とは森沢の反論。なるほど、正論である。
「非番で、なおかつ高所恐怖症じゃない人が、君たち3人しかいないんだよねぇ」
摂政:嘉納の返答はこうであった。
実はこの嘉納、自分が真っ先に登りたかったのだが、吏族:青にして紺碧(当時)により「政に支障が出るようでは困ります。おやめください。そんなことする暇があったらこの書類に決済印を!」
ということで、引き止められたのである。
しぶしぶ、調査隊は調査を開始した。といってもそもそも彼らの得意分野は人間を見ることであり、木の構造がどうこうなんて知ったこっちゃない。てきとーにしらべて、てきとーに帰ることにした。
「この木、中が空洞になってるね……」
「ねぇねぇ、ちゃんと扉がついていて、中が部屋になってるよ。それがいくつもいくつもある」
「なんというか…アパートとか、マンションみたいなもの?」
「なんだか、この木の中にみんなで住めそうね」
「こっちの大きな部屋は……体育館というか、ホールみたいだね」
3人は見聞きしたものをつき合わせ、「木の部分は居住エリアとして使用可能」という結論を出した。
さて、今度は樹上の王宮(仮)部分である。どうやってあの部分にたどり着けばいいというのか。
「おーい!こっちこっち!来て来て~、ほらこれ!」
黒崎が少し離れたところで手を振っている。残りの二人が駆け寄ると、そこには。
「これ……もしかして籠?人が乗れる?」
「そう、この籠に乗ると、この巨木の周りを這っている蔓を使って移動できるんだ。エレベーターみたいなものかなぁ」
(蔓と籠のエレベーター、略して蔓ベーター/絵:黒崎克哉)
(蔓ベーターのアップ/絵:黒崎克哉)
3人はいそいそと籠に乗り込む。
すると籠は勝手に動き出し、上方の建物へと向かった。
「うわぁ……なにこのアラビアの王宮風な建物」
建物の中に入った、3人の感想がこれである。
どう見ても王宮。どこから見ても王宮。誰が作ったのかは知らないが、ちゃんと王宮なのである。内部には謁見の間も、王族専用と思しき寝室も、豪華な食堂も用意されている。
「ねぇ、こっち、見てよ!これってさ……人間用の、カタパルト?」
帽子猫が、思わぬ発見に声を上げる。王宮(仮)の最上階には、この大木の枝を利用したパチンコ……緊急用の脱出機構とでも呼べそうなものが備わっていた。
(実際のカタパルト使用例。モデルは海法紀光(ACE)&あおひと。2人の愛の逃避行?に幸あれ/絵:黒崎克哉)
「こっちに、変な機械がある…なるほど、これを使って、打ち出し方向を変更できるみたいね」
「えっとこれは……理力変換装置かな。これで理力を集めれば、より遠くまで打ち出し可能?ほー、へー、面白そうだね。ひょっとして、これを使ったら、後ほねっこあたりまで飛べるんじゃないの?」
3人は何よりもこのカタパルトの発見に大はしゃぎし、急いで政庁に戻った。
報告を聞いた嘉納は、後に戦勝記念パレードでこのカタパルトを盛大に利用し、国王からちょっとだけお目玉をもらったという。
その後、この“避け森キング”はしばらく放置されていたのだが、高位森国人の登場に伴い、正規の王宮として使用されることとなった。
もっとも、王宮の主であるはずの国王は、よくここから脱出するため、あまり王宮としての役目を果たしていないが。
そしてあいかわらず、誰が、どうやって、こんなものを用意していたのか。依然として謎の部分は国民一同から避けられている。
(終わり)