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仮設病院・設定文 †

 海法よけ藩国は共和国でも有数の大国であったが、全くもって裕福ではなかった。

資金が入っても、すぐに景気よく使ってしまうためである。
王宮の金庫はいつでも空に近かったが、人々はそれでも笑っていた。
皆よけ藩国の気風を愛していたからだ。

 だが、あるとき暗雲がたちこめる。

幾つもの苦難を乗り越えてようやく一息つけそうな時に、事件が起こったのだった。
世に言う、舌禍事件である。

 人々は落胆し、国を捨てた。移民として、西に。

帝国に向かったのだった。

 海法藩王の決断は早く、すぐさま王宮を出て民を追った。
 王座に

『国とは土地のことではない、民こそ国なのだ。僕は国をこそ守る』

 そう、書き残して。
 苦難の道を進まざるを得なかった民達は、やりばの無い怒りを同行した王とその婚約者に向けたが、王は民には怒らなかった。

不条理に身を震わせはしたが、怒りの矛先を誤るような事はしなかったのである。

 そして国境付近。帝国への門は、閉ざされていた。

各地から集まってきた難民達は望みを失い、悲嘆に暮れた。

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