大錬金術師
大錬金術師は、数々の悲劇の反省から生まれた、海法よけ藩国の専門職である。
職業としては免許制であり、錬金術事業においては大錬金術師の指導と、国への届け出が必須とされた。けれど、そうした法律による制限は、どちらかといえば二次的なものである。過去の悲劇の繰り返しを避けようとする心は、誰もが一致していた。
それは詠唱、錬金術を基礎から学び直し、人と技術と世界の在り方を考え続けるもののみに与えられる称号であり、それ故に、謙虚さと慎重さを身上とした。
「最上の錬金術は使わない錬金術」と呼ばれるほどに、大錬金術師は思慮深く慎重であり、そもそも何もしないじゃないかと言われることもあったが、余計なことをするよりはいいじゃないかというもっともな意見もあった。
彼らが、「大錬金術師」の名にふさわしい活躍をするか。それは、これからの未来が決めることだ。