太陽電池メガフロート
EV165 海法よけ藩国提出物
この項のまとめ
・いつまでも森と共に
未来へ
森と海
「変形合体! 宇宙型メガフロート!」
「……それは都市船と言わんか?」
──都市船は紅葉さんが作ってるしね、な会話
太陽電池メガフロートは、しかしメガフロートの可能性の一つに過ぎない。
コンセプトで述べた通り、よけ藩国では様々なメガフロートの運用を研究している。現在は、まず国力および人材を太陽電池メガフロートに集中させる予定だが、それによって産業が活性化した後の、将来的な構想が存在する。
まずは造船の活況化で、居住区もしくは工業用地としてのメガフロートの生産である。
この二国以外でも、今後、人口の増加に伴う国土の圧迫が考えられ、居住区用メガフロートの需用は増大すると考えられる。
太陽電池を搭載し、そのエネルギーで生活をまかなう居住区メガフロートは、ニューワールドの新しい大地となるかもしれない。
T14より試験を重ねていたメガフロートは本来居住区型だったこともあり、設計技術は十分に進んでいる。ツグによるアイディアの一つは、メガフロートによる移動型避難施設である。よけ藩国の医療技術で充実した病院を作り、船やヘリコプターで多くの患者を収容する。輸送船で曳航すれば、医療が必要な場所の沿岸まで移動することも可能となり、避難・災害時の拠点として大きな意味を持ちうる。
次には、魚礁としての利用である(注2)。魚礁……規模を大きくしていくのなら、人工大陸棚を作ることで、漁業資源を確保し、漁業を振興させてゆく。
将来的には養殖だけでなく、栽培漁業(注3)とすることで、消費と育成のバランスを保ち、継続利用可能な資源として位置づける。
豊かな海に囲まれた海法よけ藩国ではあるがそれも無限ではない。漁業開発によって、魚の乱獲や水質汚染などの問題も出てくると思われる。だからこそ、自然との共存を大切した漁業開発をしていくことが大事なのだと考える。
現状の漁業は、まだ始まったばかりの段階だが、よけ沿岸で取れた新鮮な魚がレンジャー連邦の飛行機で空輸され、珍味としてFEGのホテルに並んだり、冷凍魚が羅幻王国の船によって輸送され、玄霧藩国で加工されて宇宙ステーションに届く日は、そう遠くないかもしれない。
よけ藩国ではまた、鍋の国に、電気自動車も発注する予定である。現状、燃料なしの電気自動車を賄うのはコスト的に難しいが、太陽光発電が普及して電気のコストが下がれば、引き合うようになる可能性がある。それが広がっていけば、よけ藩国だけでなく共和国、ニューワールド全体で、化石燃料に頼らない車が一般的となる未来は、夢物語ではない。
無論、これらは未来の話である。単なる妄想ではなく、検討・計画段階のものも多いが、未来の話であることに変わりはない。
ここでは一つだけ、形になった未来の話をしよう。
よけ藩国の海岸線を見ると、単色の太陽電池の群に混じって、目にも鮮やかな青色、松の木が見えるだろう。よく見れば、それは海岸線ではなく、海の上に浮かんでいる。
短い橋を渡ると、そこは小さな公園になっている。そこには土があり、木が植えられているが、島でない証拠に、ごくわずかに揺れている。また海面にまで届く穴から、釣りもできるようになっており、気軽な観光スポットとなっている。
発電というコンセプトとは異なるが、海法よけ藩国が、海という環境に進出するにあたって持ち込みたかったのが、森である。
残念ながら、この公園メガフロートは、完全な自給施設ではなく、藩国から真水を引いている。
これは先に書いた居住区メガフロートの一つのプロトタイプである。
よけ藩国が、メガフロートに乗って海に出ることがあるかもしれない。
けれど、よけ藩国が森の民である限り、そうして海に出る時も、きっとそこには、緑が、森があるだろう。
公園メガフロートは、その決意を未来に示すささやかなモニュメントなのだ。
クレジット
作業者一覧
イラスト:黒崎克耶、劔城藍、森沢、りゅうへんげテキスト:海法 紀光(全体メイン)、黒崎克耶(公園メガフロート原案)、ツグ(魚礁、居住区メガフロート設定メイン)、不離参(設定協力)、メビウス(設定協力、議事録作成による設定管理)、森沢(設定協力)